東京都で「積替え保管あり」の産業廃棄物収集運搬業許可を取得するには、通常の許可申請とは異なるハードルや手続きがあります。施設の要件、図面の作成、近隣住民への対応、自治体との折衝――そのどれもが専門的で複雑なため、申請を検討している多くの事業者が「どこから手を付けてよいのかわからない」と悩んでいます。
今回のインタビューでは、東京都の積替え保管許可申請に特化した行政書士法人スマートサイドの代表・横内賢郎が、現場の実例を交えながら、「許可取得までの具体的な手順」や「陥りがちな落とし穴」、「スムーズに申請を進めるためのコツ」などをわかりやすく解説します。これから許可申請を考えている方、あるいは一度断念してしまった方にとって、必ず役立つ情報が詰まったインタビューです。
「積替え保管あり」の許可を取得する際の注意点
それでは、横内先生。東京都の「積替え保管あり」の許可取得について、早速インタビューを開始させていただきます。よろしくお願いします。
はい、こちらこそ、よろしくお願いします。
弊所では『東京都の産業廃棄物収集運搬業の「積替え保管あり」の許可を取得したい』というご相談(※注1)をよく受けるのですが、まずは、前提として、産業廃棄物収集運搬業の簡単な知識について、説明します。産業廃棄物収集運搬業の許可には、「積替え保管なし」と「積替え保管あり」という2つの種類があります。通常、「産廃許可」というと「積替え保管なし」を指すことが多いです。実際に、「積替え保管なし」の許可を取得する事業者が圧倒的に多いです。
一方、収集した産業廃棄物を「自社施設で保管したい」とか「他の車両に積み替えたい」という場合には、「積替え保管あり」の許可が必要になります。「中間処分場や処理施設まで、一気に運ぶのか?」それとも「途中で保管したり、積み替えたりするのか?」という違いだと覚えていただけるとわかりやすいかと思います。
(注1)参考ページ:東京都の産業廃棄物収集運搬業の「積替え保管あり」の許可を取得したいです。
「積替え保管あり」の許可を取得するには、どんな難しい点があるのですか?
はい。
収集した産業廃棄物を途中で、保管したり、積み替えたりするわけですから、「積替え・保管する施設」が必要になります。路上や公道上に保管するわけにもいかないので、自社の倉庫や駐車場を利用して保管することが必要になります。その際に、施設所有者の同意が必要になります。
たとえば、自分の会社で借りている建物の空きスペースに産業廃棄物を保管したいと考えた場合、その建物の所有者に「産業廃棄物を保管する」旨の同意や承諾を得なければならないのです。建物所有者や土地所有者からしてみたら、「オフィスとして利用することを前提で、建物を貸していたのに、いつのまにか、廃棄物置き場になっていた」ということでは、建物や土地を貸した目的を逸脱してしまいます。そのような不測の事態は、あってはならないはずです。
ですので、もし、みなさんが、会社の空スペースや空き倉庫に産業廃棄物を保管したいと思ったら、まずは、土地や建物の所有者から、同意・承諾を得ることを考えなければなりません。
「土地・建物」の所有者から「産業廃棄物を保管すること」についての承諾や同意をもらう必要があるのですね。
その他にも、周辺住民の同意を得る必要もあります。この点については、都庁での事前相談の際に、「どの範囲の住民に、どのような形で、同意を得る必要があるのか?」必ず、確認をしていただく必要があります。東京都が発行している手引にも詳しく説明がされていますが、保管施設の形状、保管する廃棄物の種類、周辺の状況には、どれ1つとして同じものはないはずです。
産業廃棄物収集運搬業の「積替え保管あり」の許可を取得する際の、ネックになりますので、この点については、事前に都庁の審査担当者と十分なすり合わせをしておく必要があると思います(※注2)。
(注2)参考ページ:東京都で「積替え保管あり」の収集運搬業許可を取得するときの注意点
「積替え保管あり」の許可を取得する際の手続き
いま、都庁への事前相談の話が出ましたが、手続き的には、どういった流れで進んでいくのが正解なのでしょうか?
手続き的には
- 東京都庁への事前相談
- 事前計画書の作成提出
- 現地調査
- 本申請
という流れで進んでいくのが正解です。このほかに、区や市への指定作業場設置届の提出も必要になります。区や市への指定作業場設置届の提出は、東京都へ手続きとは別に、区や市の担当者と協議をしながら、進めていく必要があります。
この際に注意をしなければならない点が2点あります。
まず1点目は、「1.東京都庁への事前相談」の段階で、できるだけ詳細な計画書を作成しておくということです。事前相談は、あくまでも事前の相談なので、計画がそこまで煮詰まっていない場合もあるかと思います。しかし、だからといって「まったくのノープラン」だったり、「なんとなく廃棄物を保管できたらいいな」というレベルで相談に行くのは、時間も労力も、もったいないです。
都庁への事前相談は、予約制になっていて、いつでも自由に訪ねていけるわけではないのです。しかも、その事前相談の段階で、「どの範囲の周辺住民に、どの程度の同意を得ておく必要があるのか?」という点を詳しく聞いておきたいわけですから、すくなくとも、廃棄物の種類や量、施設周辺の地図、写真などを持参して、事前相談に臨むべきです。
また、2点目は、「1.東京都庁への事前相談」から始まって「4.本申請」を経て、「積替え保管あり」の許可通知書を取得することができるまで、かなりの長丁場になるということです。私の経験から言うと半年程度は、見ていただいた方がよいのではないかと思います。どんなに急いでも、数週間や1・2か月で、手続きが完了するようなものではありません。1~4の手続きは、予約制になっていますので、予約に空きがない以上、どんなに急いでいても先に進めることができないのです。
なお、手続きの流れについては、私の事務所のホームページでも、詳しく記載していますので、興味のある方は、ぜひ、そちらのページも参考にしていただければと思います(※注3)。
(注3)参考ページ:「積替え保管あり」許可申請の費用と手続きの流れ(東京都:限定)
こういった手続きや必要書類は、どこを見ればわかるのですか?
基本的には、東京都庁のホームぺージに記載があります。
例えば、
- 新規許可申請の場合、都庁に支払う手数料は81,000円。変更許可申請の場合、都庁に支払う手数料は71,000円
- 事前計画書の提出は、郵送不可。窓口提出のみ。
- 新規申請や変更許可申請の手引きや様式のダウンロード
は、都庁のホームぺージ(※注4)で確認することができます。
(注4)参考ページ:「東京都環境局公式:産業廃棄物収集運搬業及び処分業の許可申請・届出等」参照
ただ、細かいスケジュールや申請書の書き方は、手引きを熟読するなり、都庁の審査担当者に確認するなどの煩雑で骨の折れる作業が必要になってくると思います。「積替え保管なし」の産廃許可は自力で取得できたという会社でも「積替え保管あり」について「積替え保管なし」の時と同じようにスムーズには行かないでしょう。難易度・複雑さ・日数のどれをとっても、「積替え保管なし」とは、比べ物にはなりません。
「積替え保管あり」の許可取得は、外注した方がよい?
素人が手続きを行うのは、難しいと考えた方がよいですか?
はい、率直に言って、そう思います。素人の人が、自力で手続きを完了させるのは、かなり難しいと思います。もちろん、総務部の人や事務担当の人が、さまざまな手引きやマニュアルを読みながら、かつ、都庁に問い合わせをしながら、進めていくことが、絶対に不可能かというとそういうわけではありません。
しかし、総務部にしろ、事務担当にしろ、本来の業務があるわけですよね。その業務と並行しつつ、半年間にわたって許可取得のために行政手続きを行わなければならないというのは、労力的にも心理的にも、非常な負担になることが予想されます。たとえば、
- 事前相談や事前計画書提出のために都庁に行く時間
- 事前計画書や許可申請書といった書類を作成するための時間
- 不備や補正に対応する時間
など、どんなに時間があっても足りないと思うのです。そうした負担を避ける意味でも、専門家への依頼は有効な選択肢だと考えています。
横内先生の事務所に手続きを依頼する場合、どんなことをしてくれるのですか?
まずは、詳細なヒアリングです。「どの種類の廃棄物をどのくらいの量、どこで保管したいのか?」は、最重要です。先ほどもお話ししたように、そもそも、土地所有者・建物所有者の承諾を得ることができなければ、許可の取得はあり得ないわけですから、所有者からの承諾や同意を得るためにも、こういったヒアリングの実施は、マストになります。
また、手引きには、都庁への事前相談は「任意」といった記載がありますが、弊所では、必ず、都庁に訪問し、事前相談を実施するようにしています。お客さまのご希望次第では、事前相談にご同行いただくことも可能です。むしろ、私たちだけで、説明しきれないような場合には、お客さまにもご同行をお願いしているケースもあるくらいです。
計画書の作成や、申請書の作成については、ほぼ、弊所で対応することができます。このあたりについては、ヒアリングに回答してもらう必要なあるものの、ほぼ、丸投げという認識で問題ないと思います。
さらに、弊所では、現地調査への立ち合いも実施しています。「積替え保管あり」の許可を取得する際には、都庁の審査担当者が積替え保管施設まで来て、提出した書類に齟齬がないか、現地の調査を行います。その調査には、私たちも専門家として立ち会っているのです。
根本的な質問なのですが、事前計画書を提出したにも関わらず、許可を取得できなかったようなケースは、あるのでしょうか?
今のところ、弊所では、そのような経験はないです。
私たちの事務所では、事前相談の段階で、都庁の審査担当者と情報の共有を行い、その後の必要書類や手続きの流れについて、かなり詳しく細部を詰めていくというスタイルを取っています。そして、その結果をお客さまにフィードバックし、「どういった保管容器が必要である」とか、「いついつまでに○○が必要である」ということを、詳しくお伝えさせていただいています。
そのため、許可を取得することができなかったというケースは、ありません。ただし、これは、「許可取得が簡単だ」ということではありません。事前計画書には、廃棄物の保管手順や保管容器の写真や周辺地図など、さまざまな資料の添付が必要になりまが、現地調査の段階で、書類と実際の状況が一致しているかどうかが厳しく確認されます。もし、仮に書類の作成の仕方がいい加減であったり、実態に合致しないものであった場合には、すぐにばれてしまいます。
やはり、専門家としての経験や知識が重要であることには変わりありません。
ありがとうございます。それでは、お時間になりましたので、横内先生から、最後に一言お願いできますでしょうか?
私たちの事務所では、東京都内に「積替え保管施設」や「廃棄物の仮置き場」を設置したいとお考えの事業者さまのために、東京都の積替え保管ありの産廃許可取得に特化して、サービスを提供しています。
過去の実績でいうと、「豊島区」や「墨田区」といった住宅街においても、「積替え保管あり」の許可を取得した実績があります(※注5)。「住宅街だから無理だろう」とあきらめる前に、ぜひ一度ご相談ください。現地の状況や事業計画に応じて、実現可能性を丁寧に検討し、許可取得までしっかりとサポートさせていただきます。
(注5)参考ページ:「豊島区内で積替え保管施設設置に成功しました!」
積替え保管の許可申請は、簡単ではありません。しかし、許可を取得することによって、「運搬業務の効率化」や「労働時間の削減」に成功したお客さまもいらっしゃいます。また、簡単ではない分、積替え保管なしの許可しか持っていない他社との差別化にもつながります。だからこそ、正しい知識と経験をもとに、確実な一歩を踏み出していただければと思います。