弊所に産廃許可申請をご依頼いただく事業者さまの中には、「産業廃棄物収集運搬業だけ」を行っている会社はもちろんのこと、建設業を主たる事業としている建設業者さまもいらっしゃいます。特に、管工事、電気工事、内装工事、解体工事といった業種の建設業者さまが多いように感じます。建設現場から出た建設系廃棄物を運搬するために必要になるとのことです。
以前、とあるリフォーム会社の社長から「実際には、廃棄物を運搬することはないのだけれども、収集運搬の許可を持っていたほうが、工事現場に入りやすい」と聞いたことがあります。中には、こういった理由で産廃許可を取得する建設業者もいるのかもしれません。
今回は、大手メーカーの業務用エアコン(空調機器)を専門に扱っている建設業者さまからのご依頼でした。
依頼内容
ご依頼者さまの所在地 | 東京都目黒区 |
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申請先自治体 | 東京都+神奈川県 |
廃棄物の種類 | 廃プラスチック類/紙くず/木くず/金属くず/ガラスくずコンクリートくず及び陶磁器くず(石綿含有産業廃棄物を除く・限定無し) |
依頼内容 | 東京都・神奈川県産業廃棄物収集運搬業許可申請 |
相談内容
東京都建設業許可の管工事を取得している管工事をメインとした会社です。空調設備(主に業務用エアコン)の取り付けや設置工事を行っています。
先代の社長の頃から付き合いのある、取引先のメーカーから、突然「業務用エアコンを運ぶためには、東京都と神奈川県の産業廃棄物収集運搬業の許可が必要である」旨の要請があったそうです。今までは、特にそのようなことを言われたことがなかっため、産廃の許可を取得する必要はなかったのですが、今回、取引先からの要請があったため、弊所に相談に見えました。
弊所の対応
「業務用のエアコン」は、産業廃棄物扱いになります。なので、会社や事業所や工場などで使用した「業務用エアコン」の収集運搬には、産業廃棄物収取運搬業の許可が必要になります。
弊所としては、社長のご要望通り、なるべく早めに、東京都と神奈川県の産廃収集運搬の許可を取得するということで対応をいたしました。なお、現時点では、「東京都」と「神奈川県」の2か所の許可だけで大丈夫ということでした。
また、この会社の場合、代表取締役である社長がすでに、講習会の受講を済ませており日本産業廃棄物処理振興センターの講習会の修了証も取得済みでしたので、比較的短い期間で、「相談/お問合せ」「申請」「許可取得」までを終わらせることができました。「相談/お問合せ」から「許可取得」までの時系列は下記の通りです。
相談/お問合せ日 | 2020年10月12日 |
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申請日 | 東京都:2020年11月25日(東京都都庁の受付日)
神奈川県:2020年11月30日(神奈川県庁の受付日) |
許可取得日 | 東京都:2021年2月5日
神奈川県:2021年2月1日 |
手続きの概要
このお客様の場合、少しでも早く東京都と神奈川県の産廃許可を取得したいとのことでしたので、なるべくスムーズにタイムラグのないように書類を準備するように神経を使いました。
例えば、下記のようにお客様側(会社側)で用意してもらいたい書類と弊所側で用意する書類の2つを明確に分けたうえで、会社側が用意しなければならない書類については、初回打合せのすぐ後に、一覧にしてメールで送信しました。
お客様側(会社側)でご用意頂いた書類
お客様側(会社側)でご用意頂いた書類 |
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産業廃棄物を収集運搬する以上、「運搬容器や運搬車両がない」ということは「ない」はずなので、写真を撮って、申請書類と一緒に提出する必要があります。もし、現時点で、運搬容器(フレコンバックやポリタンク)がないようであれば、量販店から購入して、写真を撮って頂く必要があります。
また、「定款が見つからない」とか「貸借対照表が分からない」といった方がいますが、産廃許可を取得するために必須書類です。常日頃から会社にある書類の管理を徹底し、いつでも出せるように準備をしておいてください。
弊所が用意した書類
弊所が用意した書類 |
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上記のように、取締役の住民票、登記ないこと証明書、法人税納税証明書などは、委任状を頂ければ、お客様に代わって弊所にて代理取得することが可能です。
また、太字で記載したように「東京都では必要ないけど、神奈川県では必要」といった書類もあります。「東京都ではこれで通ったのだから、神奈川県でもこれで通る」といったようなわけには行きません。申請書類もひな形が異なりますので、東京都に出した書類をそのままコピーして神奈川県に提出するというわけにもいかないのです。
申請にあたって
申請するに際しては、東京都・神奈川県へのそれぞれの予約が必要です。申請の際には、手引きの記載に従って、申請書類を順番通りに並べ、正本・副本を用意し、都庁、県庁に持参しました。無事、産廃許可を取得することができました。
- 廃棄物の種類が限られている
- 講習会の修了証を取得済みである
- 会社側の書類管理がしっかりしていた
という3点を挙げることができます。以下、具体的に見て行きます。
まず「1.廃棄物の種類が限られている」という点ですが、弊所にご依頼いただくお客様の中には、「すべての廃棄物の種類の許可を取得したい」という方が少なくありません。実際に「すべての廃棄物の種類」を扱う必要があるなら良いのですが、「どうせだから1回で取れるもの取ってしまいたい」という方が多いです。しかし、例えば、廃酸を運搬するには廃酸を運ぶための運搬容器の準備が必要になります。また、動植物性残さを運搬するのであれば、動植物性残さが「どこから出て、どこへ運ぶのか」といった事業計画も作成しなければなりません。
「漠然と、すべての廃棄物の種類」で許可を取得したいという会社には、上記のような準備は無理かもしれません。そういった意味では、今回の会社は「業務用エアコンを運ぶため」といった産廃許可取得の目的が明確で、かつ、それに必要な廃棄物の種類に限っての申請であったため、都庁や県庁から余計な指摘を受けることなくスムーズに申請を済ませることができました。
次に「2.講習会の修了証を取得済みである」という点については、説明するまでもありませんね。もちろん弊所にご相談をいただくにあたって「講習会の修了証」は必須ではありませんが、すでに「講習会の修了証」をお持ちである会社(社長)のほうが、申請は早く終わらせることができます。
最後に「3.会社側の書類管理がしっかりしていた」という点です。どんなに「急いでください。お願いします!」と言われても、会社から書類が出てこないと、作業をなかなか前に進めることができません。例えば、「車検証が有効期限切れだった」「運搬容器の写真撮影に時間がかかった」「定款が見つからなかった」ということはしょっちゅうあります。しかし、本文中にも書きましたが、これらの書類は、会社側が準備しなければならない書類です。弊所で「御社の車検証」を準備することはできませんね。
そういった意味で、今回の会社は、社内の文書管理もしっかりしていて「○○と○○と○○を弊所まで郵送してください」とお願いすると、指示した通りの書類が翌週には届くといったように、素早く対応して頂くことができました。
上記の3点が、この会社の申請が、とてもスムーズにうまくいった要因ではないかと思っています。この3つは、産廃許可を取得するうえでも、大事なポイントになる点です。皆さんが産廃許可申請をする際には、ぜひ上記3点を参考にし、スムーズに許可を取得して頂きたいと思います。